続いてるのですかね?2008-07-15 Tue 21:10
というわけで前書いた咲霖ssの続き的なものです。
もう、何書いてるか分からなくなってきました。 なんともないと思いますが、よければ見てやってください。 あの時倒れて以来、私―――十六夜咲夜は外出を禁じられた。 仕事はしてもいいそうだが、外出だけは駄目との事。 買い物は、美鈴が行っているらしい。 ―――彼と会えなくなって、三日ほどたった。 お見舞いで来てくれないかと、考えたりしていたが、彼は来てくれなかった。 ………今日は、午前中は休んでいいとの事なので、ベッドで眠ることにした。 本当は仕事がしたいのだが、レミリアお嬢様の命令なら、仕方がない。 ベッドに入り、目をつぶる。 案外早く、睡魔は襲ってきた。 この命は、お嬢様のために。 この体は、あのお方のために。 この魂は、あの吸血鬼のために。 そう、仕えるとき、誓った。 なのに。 この頃は、私の心に、彼が入り込んでくる。 いつも、彼のことを考えてしまう。 いつのまにか、お嬢様と同じくらい、彼のことを想っている自分がいた。 ………彼のことが好きだという自覚はある。 だから、どうにかしてこの気持ちを伝えようと、頑張ったときもあった。 だが、もう無理だ。 使いすぎた時間を、私はこの身で払わないといけないから。 死という、代償で。 「……く、や…」 寝苦しい。 思わず、体をひとひねりさせ、ベッドに潜り込む。 「ちょ……ひど……じゃな……さく……」 誰かの声が聞こえる。 でも、それが誰かを識別するために、目を開ける気にはなれなかった。 ああ眠い。このまま眠っていれば、いつか夢の中で彼と会えるかもしれない。 しかし、それは叶う事はなかった。 「ちょっと咲夜!起きなさい!」 「はい!?」 いきなり叩きつけられた怒声により、私の意識は急浮上する。 突然だったため、能力を使って着替えるのも忘れていた。 「申し訳ございません!今、着替えますので!」 目の前に仁王立ちする吸血鬼に一瞥してから、、能力を使おうとする。 「やめろ」 「え?」 気づくと、今にも引き裂こうとする勢いで、自分の喉に真っ赤な爪があてられていた。 紅魔館の主―――レミリア・スカーレットに。 「あ……その。申し訳ございませ」 「一日ずっと寝ていたのを怒っているのではない」 今更気づいたが、お嬢様が起きているという事は、今は夜なのか。 こちらを赤きその瞳で見つめるお嬢様から視線を外し、横のカーテンのかかった窓を見ると、うっすらと光輝く月が見えた。 「横を見るな。私が話している」 「すいません」 目を背けたことを詫びる。 これほどご立腹なお嬢様も、久しぶりだ。 一体何に怒っているというのだろうか。どうやら、私が一日中寝ていたことについては言及なさらないようだし、そうなると理由が見当たらない。 すると、顔に出ていたのだろう、お嬢様はゆっくりと口を開いた。いつもよりその犬歯が長いことを見ると、今日は満月らしい。 「貴女、また時間を止めようとしたわね」 「………はい」 少し柔らかくなった口調で告げられたその言葉に、私は伏せがちに頷いた。 すぅ、とあてられていた爪が下がる。 「分かっているわよね。これ以上能力を使ったら、どうなるか」 ぐさりと、その言葉が突き刺さる。 まるで、氷をアイスピックで砕くがごとく。 「……どうせ、時間は戻りません。なら、最後までお嬢様のために使います」 これは本望だ。 これまで、自分を拾ってくれたお嬢様のために、必死に働いてきた。 お嬢様のためだけに、ここ紅魔館に居るのだ。 だから、お嬢様のために能力を使い、朽ちるのには何の悔いもない。 ただ――― 「そう。なら、あの店主に会えなくてなっても、どうでもいいのね?」 「………」 冷たく鋭い声が、私の生活用品以外何もない質素な部屋に響く。 見事に当てられて押し黙るしかない。 そう。 それだけが、ただ一つの心残り。 彼に、この気持ちを伝えないのが。 でも、どうしろというのよ? きっと、もうすぐ私は死ぬ。 何とか今は体も動くが、やがて動かなくなるだろう。 そんな私に、どうしろって言うのよ! 視界がゆがむ。床に敷かれたカーペットにぽたりと雫が落ちた。 主にはこんな顔見せまいと、ずっと決めていたはずなのに。 その雫の量は、次第に増えていく。 「うっぐ………」 下を向き、目をつぶる。 口からこぼれでる嗚咽を必死で噛み殺す。 でも、押さえようとすればするほど、泣き声が響いた。 「………」 先ほどから、お嬢様は一言もしゃべってない。 私の醜態を、どんな顔で見つめているのか。 笑っているのだろうか。 無表情なのだろうか。 それとも、別の表情か。 やがて、上の方から声が聞こえた。 「貴女に、休暇を出すわ。休暇中は、私のことなんて考えないで、自由にやりなさい」 私の嗚咽が止まる。 不思議なくらい、一瞬で。 休暇。 その間に何をすればいいか。 やることは、一つしかない。 彼の、ところへ。 「ただし、条件がある」 思わず、顔をあげる。 そこには、微笑を浮かべた、月光に照らされる赤き吸血鬼がいた。 「言うこと言ったら、ちゃんと帰ってきなさい!」 「………はい!」 こぼれる涙をぬぐう。 もう、目から涙が流れてくることはなかった。 「私は、悪魔の狗ですから」 「よろしい」 館の主の微笑に、私も笑顔で返した。 ―――明日、きっと会いに行こう。 残り少ない命。折角お嬢様が与えてくれた休暇なのだ。 ちゃんと、伝えよう。 私はそう思い、目をつぶった。 心臓の鼓動が速くて、今度はなかなか寝ることができなかった。 スポンサーサイト
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