東空落星

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4終わったぞォ! 

ラスボス前の奴が、どうみてもバックb(ry

自転車の鍵を無くし、やべえどうしよとか考えてたら、ポケットに収まってましたこんばんわウタカタです。
とりあえずssに逃げるよ!一ヶ月に十以上記事書きてえ。

『思い糸』


ヤマメちゃんだよ! タイピングミスでタマメちゃんっていうのが三つぐらいあったよ!玉のように可愛い子って意味なんですよきっと。
何故なのか分からないが私は続きものにして話を切りまくってその癖更新は遅いという傾向があるので長くしてみました。そしてグダくなった。

途中から、何書いてるか分かんなくなってきた……。


あれです、短編を何個も書き連ねているんだなウタカタはとフォローしながら読んで下さると、なんとかなると思います。いや、それでもならないですね。すみません。
無理矢理感があるのはいつもの事です……よね?
霖之助さんにだって知らんことありますよ。




部屋の隅にクモが巣を張っていた。

「……何故なんだろう」

部屋の中でクモを見るたびに思うのだが、どうやって餌を取るのだろう。蝶がひらひらと来るのを気長に待つ気なのだろうか。その前に餓死してしまうと思うのだが。
餌にされる蝶にも疑問を感じる。窓から入ってきたとして、中に花がある確信など、ある筈もないのに。
部屋の隅にはクモがいた。
店に来るクモは様々だが、左上の隅が巣の定位置である。何かシンパシーに値するものがあるのかもしれない。

「……」

クモを見上げるのに、そろそろ首が痛くなってきた。だがクモは巣に張り付けた足を微動だにせず、じっとこちらを見つめている。
こうなると、何故か視線を外せない。蛇に睨まれた蛙というわけではないが、自分から視線を外すというのは、忍びないものを感じる。相手がクモだとしてもだ。

「……逃がしてやろうか」

しかし、数分に渡る視線の交せ合いに遂に折れたのは彼のほうだった。視線を反らした時に、ニヤリとクモが笑った気がしたが、クモの口は十字型だ。
彼は、店の奥から椅子を持ってくるとその上に足を伸ばして立った。そしてそっと手を伸ばす。
手に力は込めない。もし握りつぶしてしまったら大変なことになる。
しかしクモの動きはなかなか俊敏で、うまく手の中に収められない。手の甲に巣の糸が何筋も張り付く。

「……よし」

彼―――森近霖之助が椅子から転げ落ちたのは、クモを巣の隅に追い込み手中に収めようとしたその時だった。

「くぉらあ!」

「わっ」

扉の開け方がまずかった。
引き戸の衝撃とは結構部屋に伝わるもので、戸が外れるほどの力で開けられたのだから、近くで椅子の上に立っていた霖之助はバランスを大いに崩してしまった。
結果、彼は地面に後頭部からダイブした。

「……何とも、痛い」

そこで霖之助ははっと気づいたようにたたまれた五指をゆっくりと開く。
掌の中では、カサカサとクモが動いていた。

「……倒れた拍子に力を込めなくて、良かった」

「良かないねえ!」

頭に叩き込まれたその怒号に、霖之助は戸のほうを見上げた。
眉を吊り上げた少女に、彼は問いかける。

「君は? ちなみに戸が壊れるから強くは開けないでほしいね」

「人に尋ねるより自分の方が先だと思うんだけど?」

「客に名前を尋ねるのは普通だと思うんだが……まぁいい。僕は、店主だよ」

「名前じゃないよね、それ」

「森近霖之助という、店主だ」

「じゃあ、もう店主でいいよ」

知らない少女にいきなり怒られるというのは、どういったご用件なのか彼は首を傾げるしかなかったが、とりあえず掌を動き回るクモを放してやろうと窓を開けた。

「ちょっと、話聞いてるかい?ほら無視しない!」

「え?」

また呼びかけられたので、霖之助は一度は視線をそらした方を、もう一度振り向く。
狭所にストレスを感じていたのか、クモはそのスキを縫うように窓の外へ逃げた。

「ったく、今から蜘蛛に対してひざまずけさせようとしてたのに、仲間が逃げちゃったよ。アンタが窓なんて開けるからだよ」

「逃げたいと思ったんだから、逃げたんだろう。それより、仲間ってどういう事だい?」

え、といきなり自分に話題が向けられたのに吃驚したのか、少女は息を詰まらせた。

「あ、あたしは土蜘蛛の黒谷ヤマメ。操るは病。なんでもござれで病原菌をうつせるよ」

「病、か……。それは怖い怖い」

「棒読みで台詞を言われても何も感じないよ。とにかく、蜘蛛の助けの声を聞いて地下からすっ飛んできた次第ってわけさ」

「そのクモは逃げたようだが? もう用は無いんだったら、帰ることをお勧めするよ」

「は……」

拍子抜けしたようにぽかんとしている少女―――ヤマメを尻目に霖之助は勘定台の方へ足を進める。見つめるクモもいなくなったようで、どうやら本を読む事にしたらしい。

「な、何言ってるんだい! よ、用ならあるよ!」

「何か?」

「何かじゃない! ちょっとこっち来てってば!」

服の端の端―――を指で裾を摘ままれ、霖之助は崩れるようにしてヤマメに引っ張られる。

「アレを見て、どうとも思わないのかい? なら、頭がおかしい」

少女が指さす方向には、先ほど霖之助が逃がしたクモの、巣がある。
円と米字を合わせた巣は食い破られたように糸が所々無い。
外れたピースは、霖之助の手の甲についているからだ。

「アンタが手なんて伸ばすから、蜘蛛の家が壊れちゃったんだよ。どうしてくれるのさ」

「しかし、その家主はもういないじゃないか」

「地上のはやっぱ駄目だね」

やれやれ、とヤマメは呆れたように肩を落としている。
霖之助にしてみればさっさと逃げたい所なのだが、裾を掴む小さな指を払うという行為は、やぶさかではない。
差し指で巣の方を指しながらヤマメは、

「アンタも家が壊れたら、困るんじゃないかい? 人も蜘蛛も変わらない。蜘蛛の家は壊され、だというのにアンタの家はピンピンしてる。こいつは問題だよ」

「ふむ。まぁよく考えてみてくれ」

住居の危機を感じ取った霖之助は、彼女が行動を移す前に矢継ぎ早に口を開いた。

「まず、彼……まぁ彼女かもしれんが。先ほどのクモがずっとここに巣を張っていたとして、何を餌にするんだい? 窓なんていちいち開けないから外からの物資は絶望的だ。室内で食糧を探すとしても、昆虫が食べれるようなものは無いよ」

「う、うぐぅ……?」

「さらにクモがメスだったと仮定する。もし子グモを身ごもっているというのなら、その分栄養は必要だ。君が言うとおり人もクモも変わらないのなら、栄養不足なんてことが起きたら大変だと思うよ」

「あぁ……えぃと、その、はい……?」

いける、心なしに霖之助はそう思った。
妖怪の賢者には矛盾しているような的を射ているようなカタリをされてこちらが逆に混乱するし紅白巫女には五月蝿いの一言で以後の会話を遮断されるし黒白魔法使いにいたっては話すら聞かない。
その点、ヤマメはそれらの真逆の方向を行き、先ほどからオロオロと戸惑っている。首を傾げたり、こめかみ辺りをグリグリしている所から見てそれは明らかだ。

「つまり、僕はクモを助けてあげたんだよ」

とどめと言わんばかりに、霖之助は口の両端を吊り上げる。

「えー……本当に、そうなの?」

「そうだよ。何なら、また最初から説明しようか」

「え、あー、いやぁ、それは遠慮させてもらうよ。 なんか、メンドそう」

露骨に嫌そうに首を振るヤマメ。以前、魔理沙が同じような表情をしてた気がするが、気のせいだろう。

「それじゃあ、もういいかな? そろそろ僕は趣味に勤しむ事にするよ」

「……外から見たとき、店か物置って感じだったけど、物置だったんだね」

「失礼な。僕が店主なのだから、ここは店だよ」

手の甲に付いていた糸を摘まんで取ってから霖之助は今度こそ勘定台に座る。
と、ヤマメが地面にうずくまっているのが見えた。

「どうかしたかい?」

「やっ、な、なんでもないよ」

ヤマメは何も無かったように立ち上がる。何かに手を伸ばしているように見えたのは、霖之助の錯覚だったようだ。

「それじゃあ。蜘蛛を助けてくれた事に感謝でもしとこうかねえ。 ……苛めちゃ、駄目だよ?」

「苛めたつもりは毛頭ないが」

幾許かの間、ヤマメは霖之助をじぃっと見つめていたが、やがてきびすを返して戸から出て行った。

「……ちゃんと閉めていってくれよ」

隙間風は、寒いものである。










気づいたのは、店から出て地下に帰って、すぐの事だ。

「この、嘘つきが。疫病にでもかかれば?」

私―――黒谷ヤマメは怒っていたのだと思う。
だというのに、目の前の店主は本を読むばかりだ。

「………………ん。ああ、君か。昨日ぶりだね。その口ぶりからすると、病を操れるのは本当のようだ」

店主は、今こちらに気づいたと言わんばかりに、気の抜けた声を出した。と思ったら、すぐに視線を下げて本を読みだした。

「アンタ、それでも店主なのかい?」

「あぁ、そうだが」

「疑わしいねえ。ところで」

こちらが近づくのに気づいていない店主に、私は遠慮する気持ちなど持ち得てなかった。
このまま、喰らってやろうか。

「嘘つきは、蜘蛛の糸なんて掴めないんだよ」

「……何の事だか、さっぱりだね」

店主が眉をひそめながらこちらを見上げてくる。
その表情は険しくて、私は一瞬強張ってしまったが、こんな細みの男に負ける筈がないと、自分に言い聞かせた。

「馬鹿言っちゃいけないよ。 前アナタは、この空間に食べ物なんてないと言ってたけど、そんな事全然ないじゃない」

私は店主がまた本を読みださないよう注意しながら部屋の奥に移動する。手を伸ばせば届く距離には、一つ窓がある。

「窓なんていちいち開けないって言ったけど、一回も開けないなんて事、ないだろう? そのわずかな隙間を縫ってでも虫は入ってくるよ、見えないだけで」

それに、と私は付け加えるように店の戸の方を指差して、

「店なんだから、まさか一日一回開け閉めするだろう。 その時にも入ってくる可能性はあるし、何より私達はなんでも食べるよ。最初からここに居そうなゴキブリもね」

腰に手をやり私は胸を張る。昨日の様子を見るに、この店主はかなりの蘊蓄ぶりだ。自分の無知を思い知る事になるだろう。私は信じて疑わなかった。

「……ああ、そうなのか。初めて知ったよ」

だから、私は開いた口を閉める事ができなかった。
店主は一度はこちらに視線を向けたが、すぐにそのまなこが映すのを、文字の羅列に変えた。

「な、何か言う事、ないのかい?」

居た堪れなくなって、私は恐る恐る問いかけた。
私の方から乗り込んできたというのに、何だこの様はと思う気持ちはあったが、このままでは店主は一言もしゃべりそうにはない。

「お、おーい」

よっぽど煩わしく思われたのか、やっとこちらを向いた店主の表情は硬いものだった。

「……それがどうしたというんだ。だからクモは益虫だとでも? しかしそれこそ先日君が言っていたことと反する。益虫だとか害虫だとかは人が勝手に決め付けた価値観だ。クモを放っておいて部屋の中の虫退治をお願いするというのは、同時にクモを益虫として見ているに他ならない」

言うだけ言って、すぐに店主は視線を変えた。
それが店主が本当に思っている事なのか、私にはよく分からなかった。

「簡潔に述べると、言いたいことが終わったなら、早く帰ってくれという事だよ」

そう、僕のようにね。
今度は、見ずもせずにそう言った。

「うぐぅ……」

見事に返り討ちにあってしまった。
実力行使に出るという手もいまだに残っているが、いまさらするのは舌戦で負けたのを強調するように見えて、何となく嫌だ。

もやもやとした行き場のない気持ちがこみ上げてくる。
誰のせいだ。無論、店主のせいだ。

「…………」

流行り好きの同族が言っていた。
赤と青の蜘蛛がかっこいいんだ

「店主の馬鹿たれ!」

「なっ」

同族の蜘蛛が言っていたように、私は腕と手のひらの隣接地点から糸を出す。
糸は放物線を描くことなく真っ直ぐに進み、やがて店主の持つ本にその先端をくっつけた。

「ふん!」

力任せに伸びた糸を引っ張る。粘着性が高く、細いが頑丈な糸は獲物ごと私の方に戻ってきた。

「それは、僕の本なんだが」

その眼は返せと訴えてくる。
私は本を抱えると、

「嫌だね、返してやらないよ!」

逃げた。






「これ、どうしようかな」

私は暗い中、一人ごちた。遠くに光が見えるが、あれは地霊殿の光だろうか、もしかしたら宴会の光かもしれない。
私は、行かないが。そもそも、行けないが。
鬼が一人で時々来るが、それは単なる僥倖である。

「何考えているんだろうねえ。 本当」

それは店主に言った言葉では無い。
自分自身にだ。
強奪した本を宙に放る。

「どうしようかな、これ」

再び口から出たのは、まるで同じ言葉。
あの時、逃げるようにして帰る私の姿は、まるで子供だった。
駄々をこねる事のできる相手など、私には一人もいないというのに。
よくよく考えると、これはやり過ぎだったかもしれない。自分から挑発をして、負け惜しみのように本を奪って。
落下してきた本を、掴む。

「……ん」

ふと気配を感じて私は振り返った。
キスメが、横にいた。
この子は何があっても喋らないから、考え事をしている時はよくこうなる。

「この本? あぁ、ちょっとね」

地霊の主というわけでは無いのだが、キスメの事なら表情やジェスチャーから少しわかる。と言っても、分かるようになったのは最近の事だが。

「いやいや、教えたくないって意味じゃないんだよ。 ちょっと、あたしが子供すぎるってのが露見しちゃうからねえ」

そうなの? と言いたげに首を傾げるキスメ。彼女の入り込んでいる桶を抜いた彼我の距離は、今にも触れそうなほど近い。
キスメぐらいだ。ここまで近づいてきてくれるのは。鬼も水橋のも、ここまでは近づかない。

「めんどくさいなぁ、ほんと」

キスメの髪の毛をすすぐ。さらさらとして、気持ちいい。

「くすぐったい? あはは、可愛いねえキスメは」

キスメは、旧地獄でもあるこの地下にてかなり純粋で素直な部類に入ると思う。
ほとんどの連中は嫌な奴や最低な奴ばかりだというのに。

「なんだか、キスメを見ていると、自分の事がばからしくなってくるよ」

明日、もう一度店主の所に行くことにした。
そして、それがきっと最後だろう。





「やぁ。……ほら、前に来た時は、悪かったね。こいつは返す」


私は戸を開けて早々、いの一番に告げた。
結局店主の所に来たのは、決心した一週間後になってしまっていた。
懐に手持っていた本を差しだすように上にあげる。
店主は案の定本を読んでいたが、今回はさすがに無視することは無いだろう。
何せ、自分の所持品を奪われていたのだから。
それも、相手は私―――地下の嫌われ者の、筆頭にである。
地下の評判を店主が知らないにしても、嫌われ者と言う事に慣れて性格がひねくれた私を三日も見ているのだ、既に地下の奴らと同じ気持ちを持っている事だろう。

本が畳まれた。私が持っているのはすでに閉じてあるから違う。
店主はそれまで読んでいた本を台の上に置いた。
店主がこちらを食い入るように見ている。負い目があるせいか、私は視線から顔を反らした。

「…………」

ギィと擦れるような物音がする。
店主が椅子から立ち上がった音だと分かったのは、店主が一歩ずつこちらに近づいてきていたからである。
もしかしたら、殴るつもりだろうか、男の癖に。
まぁ、自分も実力行使に出ようと思い立つ事もあったから、何をされても文句は言えないが。
影が上から被さってきた。
店主とでは身長にかなりの差がある。視線を合わせようとすると、彼が腰を折るか私が浮かないといけないだろう。

「ん……」

掴んでいた本がゆっくりと引っ張られるのを感じる。店主が手を伸ばしたのだろう。
そのまま託すように手を放そうとした私は、

ぽふん

「へ?」

その直後に来た感触が理解できなかった。
店主は左手で本を掴んでいる。
そして右手は何故か、私の頭へと伸びていた。

「よく持ってきたね。これまで僕の知り合いには勝手に持っていって返さない人ばかりだから、嬉しい限りだ」

ぽふんという軽い衝撃に、頭に手を置かれたのだと気がついた時には、店主は私の頭を撫でていた。
慣れた手つきで、しかも柔らかい。

「……っは。 ちょ、ちょっと! 止めてよ!」

呆然としてただ頭を撫でられていた私ははっと我に返って即座に距離をとった。

「いや、すまない。 昔、ある子によくやっていたんだ。今はそんな機会無くなってしまったがね」

懐かしいことを思い出してしまった、と言いたげな店主の眼はどこかここでは無い所を見ている。
何を考えているか分からない店主は置いといて、今は自分の心を落ち着かせるべきだろう。

「…………」

触られた。
おそらくキスメ以外で、初めて。
髪の毛にふれる。店主が、撫でた部分だ。

「……何で、こんな事したんだよ」

「だから言っているだろう。 昔の事を思い出したんだと」

「そう言う事じゃなくて!」

そう言う事じゃない。回想の人物とやらと私が被って見えたとしてもだ。

「……怖くないの、私が?」

「怖い?」

店主は知っている筈だ。私が病を操れる事を。
衰弱も病と言うならば、天人でさえ最後は五衰により滅びていく。
接客―――と言っても私は未だにここが店だとは信じていないが―――はできても、触るなどできるわけがない。
散々言われてきた言葉がよみがえってくる。
何度も邪見にされ、遠くから指をくわえて見ているだけだった。
店主も、そう思っている筈だ。私の周りにいた人々と、同じように。
なのに、なぜこの男は触れた?
私が頭を抱えながら後退する中、

「……ふむ」

店主は顎をさすって考えるしぐさを見せてから、

「怖くは無いね」

と、一言だけ言った。

「……なんでだよ」

私はまた分からなくなる。
私なら、今すぐにでもこの部屋の中に三日は残るだろう病原菌を散布することができる。
店主の命は、私が握っているも同然なのだ。

「やろうと思えば、アナタの命はすぐにでも消えるんだよ、怖くないのかい?」

「怖くは無い、と言ったばかりなんだが? まぁ、戸を最後まで閉めなかったりいきなり本を奪う事に関してはささやかな怒りがあるがね」

「…………」

私が呆然としていると、店主は勘定台の方へ戻っていく。渡した本を抱えて戻っていく。
その勢いで店主は椅子に座った。また本を読み始めるつもりなのだろう。
と、たまたま座るときに、未だに突っ立ったままの私が目に入ったのだろう、彼は一つ溜息をついてから、

「それに、病をうつすつもりなら、僕がクモの巣を破いたあの時、最初に来た時にやっているだろう?」

それだけ言って、店主は黙りこんだ。もう、喋るつもりはないらしい。
私は、目を見開いていた。

「ははは……」

そういえば、と私は思い出す。
時々、遠くの宴会の音や光を見つめていた事を。
騒がしく、安眠を妨害され、いつも疎ましく思っていた人々の声に。
自分も、私なんかにかまうせいで友達の少ないキスメと、誰も通らない橋をずっと見つめる水橋も呼んで、楽しく宴会騒ぎをしたいと、あこがれていた事に。
昔は、病のことなど言いふらさず、誰これに話しかけていたねえ。

「はっはっは!」

「何だい、いきなり……うおっ」

気づいた時には、私の体は地から浮いていた。
頬は、緩みっぱなしだ。

「……重いんだが」

「細かい事気にするねえ。男らしくないよ?」

店主が迷惑そうに眼を細めているが、知るもんか。
店主の首にからませた腕に力を込める。私の体は引っ張られるようにして、もっと店主の顔に近づいた。
私は、自らの口から笑みが零れるのとほぼ同時に、彼に抱きついていた。

「……君の体が邪魔して、読書ができないよ」

「いいじゃないかい。女の子が好いてくれてるんだから、もっと嬉しがるもんだよ」

「捕食されたくはないものだけどね。ならば僕は最後の晩餐ならぬ、最後の読書に勤しむ事にするよな。だから、どいてくれ」

抱きついた私がからませていた手を店主はほどこうとする。
そう言う意味じゃないんだけど、と私は小さくつぶやく。店主は感覚が鈍いらしい。

「まぁ、まだいいよ。 とりあえず……」

私は抵抗することもなく、交差した腕をほどいた。
そのまま戸へと向かう。今日は、もう帰ろう。

「もう、今日は帰るよ。本を返しに来ただけだしねえ」

「本当にそれだけだと思っているなら、自分の心にもう一度問いかけるといい」

「あははは」

店主と会ったのはまだ三回だけだ。そんな短い時間で自分の中に芽生えたものが本物なのかどうか、まだ分からない。
感覚的に思っただけだが、彼もただの人間というわけでは無い筈だ。私と同じ妖怪かもしれない。
だからこそ、気付かされたのかもしれないが。
大丈夫、時間はたくさんある。
蜘蛛は、餌を取る時も、長く待つのだから。


「それじゃあ、また来るよ」

巣に来たのが、ただの餌かそれとも別のものなのか。
それを知るには、まだ時間がかかりそうだった。



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小説という駄文 | コメント:2 | トラックバック:0 |
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この記事のコメント

私は無理矢理感は感じませんでしたね、とっても良かったです
相変わらず香霖鈍い
2009-04-23 Thu 06:43 | URL | 放浪もの #-[ 編集]
このコメントは管理者の承認待ちです
2010-01-30 Sat 16:29 | | #[ 編集]

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