東空落星

テンションによって方向性が変わるサイト。東方のことを書いてたりしているのでよろしくです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

ああ。消えゆくは塵のごとく。

グロ注意的な感じなところが最初にありますので、注意です。
さらに、文章もヤヴァイ注意報発令です。
そのくせ、めちゃくちゃ長いです。ありえないです。
それでも読んでくれるというなら、ありがたい限りです。
それではリクエストssの方にまいりましょう。

まず、謝罪を。
リクエストしてくれた方、すみません。
『こんなの作ってくれって言った覚えない』
こう言われても仕方がないようなssです。
そして、設定変です。無理矢理です。まったくもって駄目駄目です。なんじゃこりゃああああ!?
なんか私ってアレですね。人としてのいろんなトコがぶれちゃってる感じ?
追記でss。今回は何故かタイトルありです。
また、アドバイスをくれた方がおりましたので、その方が言ってくれた人物も登場させたいと思います。




『人が抱く幻想と、彼が生きた現実と』



それでは、どうぞ。
どうとでもなれぃ。












三日前の、十七時三十六分二十七秒。

森近霖之助は死んだ。







半妖とは、半分は妖怪、半分は人間でできている種族である。
少なくとも、人間よりは強くできているのだ。
なのに、彼は死んだ。
つまり、もう戻ってこないのである。
此の世に。
彼はその時、珍しく散歩をしていた。
いや、それが彼の運命だったのかもしれない。
だって、その時外に行かなければ、死ななかったかもしれないのだから。

先ほどまで上の崖にあった大きな岩石は、いつの間にか転がり落ちている。
一番最初に彼の『死体』を発見したのは、霧雨魔理沙だ。





「ん?あの服装は……」

彼女は、香霖堂に向かうところだった。
理由はすべからく、泥棒だろうが。
空を飛んでいると、下に生える木の陰から見慣れた服装が見えた。

「何で香霖がこんな所に?」

何をしているのだろうか、と角度を変えて目を凝らして見る。
しかし、どの角度から見ても、腕しか見えず、彼の顔はどこにも見えない。

「ふ?ん。香霖め。私の存在に気付いてやがるな?」

どうせ、木の後ろにでも隠れたのだろう。
くっくっく、と魔理沙は笑った。
香霖、腕が隠れてないぜ?

「何してんだぜ?私にだけ見せないつもりか?」

すぅ、と箒から降り、地面に降り立つ。
すると彼女は眉をひそめた。

「うん?なんだか、ひどい臭いだぜ」

くさい。嗅いだこと無いような臭いが、辺り一帯に広がっている。
こんな所で、彼は何をしているのだろうか。
くさい臭いを我慢しつつ、彼の腕が見えたところまで来ようとして―――

「?」

その歩みを止めた。

「こ、香霖?」

理解してしまった。
なぜ、腕しか見えなかったか、を。
別に、彼が隠れたわけじゃなかったのだ。
腕しか、無い。
腕から先が、どこにも無いのだ。
ちぎれ、そこから血が大量に出ている。
腕には生気が感じられず、青黒く変色していた。

「なっ………」

思わず、後ずさりする。
その顔からは、血の気が引いていた。
何かの間違いだ、私は夢を見ているのだろうか、と考え、立ち去ろうとする。

「ひっ!」

その時、見えてしまった。
本体を失った腕があった、もっと奥の奥に―――

「あああぁ………」

眼鏡のガラスが食い込み血だらけとなり、瞳孔が開いてしまっている霖之助の顔が。
腕と同じように、首から下が無い状態で。

「う、うげぇぇぇぇ………」

瞬間、彼女は嘔吐した。
辺り一帯に、酸っぱい臭いが広がる。
しかしそれも、彼の死体から発せられる臭気によって、すぐにかき消された。

「こ、香霖……?うそ、だよな……」

森近霖之助は答えない。

「なぁ……。生き、てるよな」

森近霖之助『だったもの』は答えない。
それは何故か。
彼がもう、死んでるからだ。
此の世には、もういないからだ。

「あ、ああ、ああああ…………」

夢だ。
夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ幻だ夢だ夢だ夢だ何かの間違いだ夢だ夢だ夢だ夢だ幻だ幻想だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ幻だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ幻だ夢だ夢だ夢だ何かの間違いだ夢だ夢だ夢だ夢だ幻だ幻想だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ幻だ。

彼女は泣きながら、ずっとそう願え続けた。
先がちぎれている『死体』の彼の指を握る。

「なぁ…。こう、りん。へん、じしてくれ」

ずちゃり、と。
今度は、指がちぎれる音がした。




何故彼は死んだのだろうか。
誰が、彼に死を宣告したのだろうか。
神か。
死神か。
閻魔か。
それとも別の何かか。
死は、万物に対して平等だ。
だから、いつにでも死はやってくる。
彼の死は、決まっていたのだろうか。

ぐちゃぐちゃになった彼は、棺の中に入れられた。
棺は、博麗神社に持ち込まれた。




彼、森近霖之助の死因は落石の直撃だったという。
直撃の際に左腕と右足、それに首はもぎれたらしい。
即死、というやつだ。
それを伝えに来たのは、七色の人形遣いである、アリスであった。
最初に彼を発見したのは魔理沙だったという話だが、そんな事どうでもよかった。
伝えに来た時のアリスは、
『死んでせいせいしたわ』
と言っていたが、その時の彼女の泣きじゃくった後のような顔は、何だったのだろうか。
それにしても。
お茶をたかれる奴が一人減ったわ、と私―――博麗霊夢は舌打ちした。

「はぁ……」

ため息をつく。
私より丈夫にできてる癖に、なんで死ぬのよ。
障子で隔てられた、奥の部屋に視線を移す。
今、彼はあそこに居る。
棺の中に入れられて、だが。

パスンッ

障子をあけると、部屋の中央に棺はあった。
そのあまりの綺麗さは、中の彼の状態とは正反対であった。

「まったく、私より寿命も長いくせに、どうして死ぬのよ」

畳に座り、棺を見つめる。
ふと、彼の飛び散った死体を拾い集め、棺の中に押し込めた女の姿が脳裏をよぎった。
大妖怪、八雲紫の姿が。
彼女は無表情のまま、普段ならスキマを使ってやったであろうそれを、自らの手で行った。
ずちゃりずちゃりと、飛び散った肉片を拾い―――
からん、からん、と小さな小骨までも拾い上げた。
全て拾い終わった後には、彼女の指は赤く、血まみれだった。
だが彼女は、それに眉一つ動かさなかった。
ただただ無表情に、霖之助を成していた物体を見つめていた。
彼女が何を考えていたか、私にはわからない。
そんなことを考えてる暇も、私には無い。

「そういえば私、ツケ、払ってなかったわね」

棺に眠る彼に向って、言う。
答えは、ないのだけど。

「あなたは、どうして死んだの?」

棺に手を触れる。
冷たい感触がした。

「これじゃあ、ツケが返せないじゃない」

棺を開けようとして、すぐにその考えを消す。
ぐちゃぐちゃになった彼の顔を見たら、現実に戻されてしまうもの。
彼は死んだ。これは、覆せない事実だ。
でも、認めたくない自分が心に居る。
また店に行けば、嫌々ながらもお茶をくれる、彼が居るような気がして。
その時、すぅ、と涙が頬を伝った。

「な、なにかしら、コレ」

手で、零れ落ちる涙をぬぐう。
でも、涙は止まらず、流れ落ちてくる。
彼女の気持ちを、表すごとく。

「ねぇ。どうし、て。あなたは死んだの?」

もう一度、問いかける。

「!」

ふと、私は後ろを振り返った。
彼の、声が聞こえた気がしたから。
だけど、それはありえない。

彼は、私の目の前に居るのだから。
死体となって。
私の抱いた幻想は、いとも簡単に砕かれた。




死を遂げた生物は、あの世に向かう。
こちら側には、決して帰ってこれない。
彼も、その例外ではないのだ。
魂は輪廻に組み込まれ、やがて転生する。
しかし、その時来るのは魂が同じというだけで彼という存在ではない。
別人だ。
根本的には同じ、とあの妖怪の賢者なら口にするだろう。
しかし、私は我慢できない。
彼は、彼の記憶をもってこそ、彼なのだから。
私と同じように、転生はしてくれないのだから。

死という現実を、封じ込めた人間もいる。
十六夜咲夜は、今日もメイド長としての任を果たしていた。






皿が、滑り落ちる。
それを、私は止める事が出来なかった。

ガチャン!

「咲夜?珍しいわね」

「す、すいません………」

皿の落ちた音に、パチュリー様が眉をひそめる。
欠片となってしまった皿を私は一つずつ丁寧に拾いあげる。

「時を止めることのできる貴女なら、落とすなんてことないでしょうに」

「はい………」

自分でも、おかしいのは分かっていた。
どうもこの頃、ボーっとする時が多い。
お嬢様に呼ばれたのに気付かなかったときは、もう駄目かもしれないとと思ったぐらいだ。

「記憶操作は、上手く行ってるようね………」

「へ?何か、仰いましたか?」

「いや、何も」

そう言うと、パチュリー様は読書に戻ってしまった。
本当に、何も言ってなかったかしら?
だが、自分が仕える主の親友を、疑うのは恥ずべきことだ。
粉々になった皿の欠片を全て拾いあげた私は、

「それでは」

一礼し、図書館を後にした。
時を止めて。



ふと、お嬢様がお茶会を開こうとしていたのを思い出した。
いつもならこんなこと忘れないのに、本当に最近の私はおかしい。
棚を開け、いつも置いている場所に手を伸ばす。

「あら大変………」

いつ使い切ったのか、すでに紅茶の葉は残っていなかった。
どこかにストックは残ってないだろうか、と奥を探す。
すると、

「ああ、あったわ」

奥の方に、一袋だけ置いてあった。
しかも、かなり高級なやつだ。
お嬢様たち以外にこの葉は出さないから、分けて置いとく必要など無いのに、何故別にして置いといたのだろうか。
自分以外には、この棚は誰も触らないはずなのに。
首をかしげながらも、袋を取り出す。
その時―――

「ん?」

取り出すとき、それは目に映った。
袋に、何か書いてある。
殴り書きだが、それは確かに自分の字だった。
目を凝らして、よく見てみる。
少しして、それは『森近霖之助』と読むのだと理解した。
人の名前らしい。
大きく書かれたその五文字の下に、その人専用の葉なのか、『用』と書いてあった。
『森近霖之助用』
全文は、こうだ。

「人の名前っぽいけど………。誰なのかしら、コレ」

私には、まったく覚えのない名前だ。
なのに、私の字で書いてある。
これでは、矛盾してしまっている。
だけど、その矛盾を解く答えを、私は見つけられなかった。

「お嬢様達以外には、この葉は出していないはずなのに………」

森近霖之助、という字を見つめる。
この紅魔館に訪れてきた人に、こんな名前のやつはいない。
だからと言って、妖精メイド専用にこんな高級なやつを出すわけがない。
自分でした筈なのに、自分で分からない。
そんな不思議な感覚に戸惑っていると、

「ッ!?」

何かが見えた。
………人だ。男性の。
私はその人のことを知っている。
知って、いる。

「うぐぅ………」

ひどい頭痛と、吐き気が襲ってくる。
それと同時に、頭の中でフラッシュバックのように次々と映像が流れて行く。
本を読んでいる彼。
サービスだ、と紅茶をおまけしてくれた彼。
私が入れた紅茶を、美味しいと言ってくれた彼。
カチューシャを、くれた彼。

「店主さん……」

なんで、今まで忘れていたのだろう。
森近霖之助。
彼の名前を。
彼といた時間を。
彼という、存在を。

「………ああ」

また、会いに行かないと。
そう思った瞬間、頭痛は激しくなり―――
私、十六夜咲夜は意識を失った。




「………レミィ。これで、本当に良かったの?」

「覚えてて悲しいぐらいなら、忘れてしまえばいい。咲夜のためを思って私は、……パチェ。あなたに頼んだのよ」

赤き吸血鬼は、窓の向こうを向いたままだ。

「………でも、咲夜は倒れたわ」

「………」

「きっと、思い出したのだと思うわ。『森近霖之助』という存在を。魔法で記憶操作をして対象の人物を忘れさせても、やはりそれは一時的にしか過ぎないのよ」

「じゃあ、『森近霖之助は死亡した』というのも思い出している?」

「…………それを思い出そうとすると、頭痛が激しくなって気絶してしまうように設定したから、まだ思い出してないでしょう。でも、これの効果は一度きり………」

「なら、もう一度忘れさせてよ。あの男の存在を」

「!?」

「あなたなら、できるでしょう?」

「それは……そうだけど」

「頼むわ」

「…………」

無言で、窓を向いたままの親友を見つめる、図書館の魔女。
だから、赤き吸血鬼も、無言でその視線に答えた。

『お願い』、と。

「………分かったわ」

すぅ、と部屋から一つ気配が消える。
残った彼女は、誰もいなくなったというのに、窓を閉めようとはしなかった。
赤き吸血鬼は、思い出していた。
咲夜が、あの男の死を知った時の顔を。

『どうして………!』

咲夜はしゃがみこみ、ずっと泣いていた。

『……お嬢様ッ!お嬢様がそのお力を使えば、彼は死ななかったのに!』

涙に濡れた顔で、こちらを見つめてきた彼女。
怒りが、その顔には満ちていた。
仕方がなかった、といえば嘘になるかもしれない。
でも、本当に仕方がなかったのだ。

あの時、彼に落石が落ちる瞬間、彼の未来には八十二通りのパターンがあった。
それを見た時、私は絶句した。
―――死。
全ての未来が、『死』に直結していたのだ。
心臓がつぶされる未来。
首がちぎれ飛ぶ未来。
四肢がバラバラになる未来。
八十二通り、すべて。
私の力、運命を変える力は、それになる可能性のあるものしか、変える事が出来ない。
つまり、『生き残れる』という未来が無いという事は、私の能力が発動しないということだ。
だから、私は使えなかった。
運命を、変えられなかった。

「ふふふ………」

こぼれる笑みは、自嘲である。
そのあと私は、自暴自棄になった咲夜を記憶操作するよう、パチェに頼んだ。
彼という存在を、忘れさせるために。
全てを、無かった事にするために。
そしてまた私は、全部無かった事にしようとしている。

「うふふ………」

私は、咲夜を悲しませたくない。
だから、あなたがあの男のことを思い出すたびに、忘れさせてあげる。
心配しないで。もう、辛い思いはさせないから。

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ…………」

わらう。ワラウ。笑う。嗤う。哂う。
吸血鬼ノ笑イ声ハ、赤キ魔ノ館ニ響キ渡ッタ。
ずっト、ズッと。




彼という存在は、幻想郷全体で見れば、ちっぽけなものだ。
しかし、彼の死は幻想郷全体を揺るがした。
生物は、生きているうちが花だというのに、皮肉なものだ。
いずれ、彼の死も忘れ去られていくだろう。
幻想郷とは、人々に忘れ去られたものが行きつく場所。
ならば、幻想郷にて忘れ去られたものは、どこに行くのだろうか。
………そんなことは、私がさせない。
彼の体が塵に還ったとしても。
彼の魂が違う存在として転生してきたとしても。
彼という存在が居たことを、私はここに記す。
それだけが、私にできる事だから。



彼の肉体は土葬された。
悲惨な死に方をした彼には、ゆっくり土の中で眠っていてほしい。
そう、誰もが願ったからだ。





彼の葬式が終わってから、一週間が過ぎた。
土に埋められるまで、彼はずっと棺に入ったままだった。
当たり前だ。あんな悲惨な彼の体。誰も、見たくなんてない。

ブワッ

一陣の風が、突き抜ける。
風に飛ばされそうになる帽子を、私―――上白沢慧音は手で押さえた。
目の前には、『森近霖之助之墓』と掘られた墓石がある。

「………………」

彼の墓石は、博麗神社の裏側に作られた。
いつ見ても綺麗なままなのは、巫女が毎日磨いているからだろうか。

主を失った香霖堂は、今は霧雨魔理沙という新しい主を得て、活気を取り戻しつつある。
……いや、それはおかしいな。元々、人気がないところだったのだから。
とにかく、霧雨魔理沙は彼の遺志を引き継ぎ、香霖堂を続けるつもりらしい。
店主が変わっても、店の名前を変えないのは、森近霖之助を忘れないためであろうか。
ちなみに、草薙の剣は霧雨魔理沙がどこかに隠したらしい。誰にもあげるつもりはなさそうだ。

「お前がいなくなってしばらく経つが、みんな立ち直り始めたぞ」

幻想郷には普通の日々が帰ってきた。
東から太陽が昇り、西に沈んでいく。
起きて、食べて、寝る。
そんな日常が。
だが―――

「………私は、お前が居る事が当たり前のことだと思っていた。お前が居てくれるから、日々を感じる事が出来た。なのに―――」

ぎゅり、と拳を握りしめる。
爪が食い込んで、血がにじんだ。

「お前は、死んでしまった。私が死ぬよりもずっと早くに」

じわり、と視界がにじむ。
涙がたまっているのだと気づくのには、かなり時間がかかった。

「なかった事に、したい」

お前が死んだこと、を。

「もう一度、見たい」

お前の、笑った顔を。

「また、会いたい」

此の世で。
でも、もうそれは無理だ。
だって、彼はここに眠っているのだから。
永遠に。

「なぁ……霖之助。お前は、どうして死んだんだ?」

それは、今日までに何人もの少女達が口にした言葉。
埋まらない心の穴。
認めたくない現実。
これが夢だったらという、儚い望み。

だけど、彼がそれに答えることは、無い。
『死』んでいるのだから。

歴史の半獣の慟哭を、聴く者はいなかった。














三日前の、十七時三十六分二十七秒。

森近霖之助は死んだ。




半妖とは、半分は妖怪、半分は人間でできている種族である。
少なくとも、人間よりは強くできているのだ。
なのに、彼は死んだ。
つまり、もう戻ってこないのである。
此の世に。
彼はその時、珍しく散歩をしていた。
いや、それが彼の運命だったのかもしれない。
だって、その時外に行かなければ、死ななかったかもしれないのだから。
何故彼は死んだのだろうか。
誰が、彼に死を宣告したのだろうか。
神か。
死神か。
閻魔か。
それとも別の何かか。
死は、万物に対して平等だ。
だから、いつにでも死はやってくる。
彼の死は、決まっていたのだろうか。
死を遂げた生物は、あの世に向かう。
こちら側には、決して帰ってこれない。
彼も、その例外ではないのだ。
魂は輪廻に組み込まれ、やがて転生する。
しかし、その時来るのは魂が同じというだけで彼という存在ではない。
別人だ。
根本的には同じ、とあの妖怪の賢者なら口にするだろう。
しかし、私は我慢できない。
彼は、彼の記憶をもってこそ、彼なのだから。
私と同じように、転生はしてくれないのだから。
彼という存在は、幻想郷全体で見れば、ちっぽけなものだ。
しかし、彼の死は幻想郷全体を揺るがした。
生物は、生きているうちが花だというのに、皮肉なものだ。
いずれ、彼の死も忘れ去られていくだろう。
幻想郷とは、人々に忘れ去られたものが行きつく場所。
ならば、幻想郷にて忘れ去られたものは、どこに行くのだろうか。
………そんなことは、私がさせない。
彼の体が塵に還ったとしても。
彼の魂が違う存在として転生してきたとしても。
彼という存在が居たことを、私はここに記す。
それだけが、私にできる事だから。
そういえば、彼に初めて会ったのは、いつだったろうか。
阿弥の時だったろうか、それとも、阿七の時だろうか。
いや、もっと前だったかもしれない。
私が死ぬ時、いつも傍に居てくれた、あの人。
しかし、今の私が死ぬ時、もう彼は居てくれない。
彼も、死んでしまったから。
岩に押しつぶされるという、悲惨な死に方で。
前、私が転生した時のように、彼は待っていてくれないのだ。
……私は怖い。
次に転生した時、もし彼のことを忘れていたら、と。
彼と居た楽しさを、忘れてしまったら、と。
だから、私はここに遺そうと思う。
彼―――森近霖之助についての書物を。
またこれは、稗田の家の者として作る幻想郷縁起とは違う。
彼のことだけを書いた書物。
『今』の私が、『次』の私へと託す書物だ。
次の私がこれを見た時、転生により彼のことをもし忘れてしまっていても、すぐに思い出せるように。
彼は死んだ。
ならばこの書に、私が見てきた彼の全てを書こうではないか。
見たものは忘れない、それが私―――稗田阿求の能力なのだから。





スポンサーサイト
小説という駄文 | コメント:1 | トラックバック:0 |
<<あれ、冷蔵庫が閉まらない?ちょ、この冷凍食品邪魔だってば。 | HOME | な ん じゃ こ りゃ 。>>

この記事のコメント

今更かと思いますが。
草那芸の剣は霧雨魔理沙がどこかに隠したらしい
  ↓ 
草薙の剣では?
2008-10-21 Tue 19:49 | URL | 無命 #-[ 編集]

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。